妄想川柳についての説明
- 2019/08/27
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現在は一般就労されている圭の家のOBの方から、妄想川柳についての説明がありましたので、ご紹介させて頂きます。
レトリックで煌めく川柳
川柳の作句において、レトリックを使うことは絶大な優位性を持つ。具体例で説明してみよう。
草引きで 滲む努力の 汗光る(2018年 自作)
炎天の 努力の滴 草むしり(2018年 自作)
双方の句とも同じ情景を詠んだ川柳である。二句目では「滴」=「汗」というメタファーが駆使されている。炎天下で草引きをしているという表現から、「滴」が「汗」だと読み解けるのである。後の句の方が、より叙情的な味わいを醸し出していることが分かるであろう。もう一句メタファーを使った例を見てみよう。
精神の ベータ崩壊 やる気湧く(2019年 自作)
ベータ崩壊とは原子核反応の一種であり、原子核内において中性子から電子が飛び出し、陽子に変換する現象である。それは連鎖的な反応である。「精神のベータ崩壊」とはつまり、電子が飛び出るように余分な負のエネルギーが身体から抜ける。その結果、陽子のように前向きになるということを歌い手は主張しているのである。「ベータ崩壊」=「負荷の除去」であり、徐々に心のエネルギーが湧出していく様が、読み手には思い描けるのではないだろうか。直喩法を使った川柳も一つ紹介したい。
病床に 骸のごとく 横たわる(2018年 自作)
この句では文字通り、病院のベッドの上に骸のように寝ている姿態が描写されている。読者には、歌人の無気力な容態がまざまざと想像できるはずだ。これらのように、レトリックを自在に使いこなせるようになると、川柳の切れ味が格段に増すのである。
妄想川柳歌人 白柳へん太